V.結果と考察

1.EBN、看護疫学および看護情報学に関する先行研究の情報収集


1)各種データベース検索等を通じた情報収集

(1)1999年11月末時点において、MEDLINE、医学中央雑誌のオンライン検索、インターネットでの検索エンジンを使用した検索等を通じて情報を収集し、その内容を平成11 年12月の東京保健科学学会で発表した(図表1)。その概要は次のとおりである。 まず、1995年以降の文献検索は、医学中央雑誌で「看護疫学」および「看護情報学」 をそれぞれキーワードとして検索した結果、いずれも該当する文献は見当たらなかっ た。(最近、改めて「看護情報学」と「看護情報科学」で検索した結果、前者は3件、 後者は5件が該当した)
  次に、MEDLINEにより「nursing epidemiology」および「nursing informatics」を キーワードとして検索した結果、nursing epidemiologyは3件(うちタイトルに含む のはゼロ)、nursing informaticsは84件(うちタイトルに含むのは47件)が該当し た。これらの結果より、欧米においても看護疫学(Nursing Epidemiology)という用 語は使われておらず、疫学の看護への応用という捉え方が一般的であると考えられた。 次いで、看護情報学についてインターネット上のサイトの検索を、まずgoo(日本語) を用いて「看護情報学」をキーワードとして行った結果、62件が該当した。AltaVista (ENGLISH)を用いて「nursing informatics」をキーワードとして検索した結果、4548 件が該当した。
 さらに、収集文献(文献2〜文献5)から、アメリカにおらに、収集文献(文献2〜文献5)から、アメリカにおける看護情報学教育の概 要、看護情報スペシャリストの養成や、アメリカ看護協会の看護情報学に関するパン フレットの存在について把握するとともに、わが国の日本医療情報学会における1985 年の看護情報システム研究会の発足(文献6)や、当学会が発刊した医療情報学全3 巻(文献7)における関連記述等について概観した。
 また、従来の疫学の代表的な定義とその専門領域を整理・紹介するとともに、これ らをもとにして、アメリカ看護協会の看護に関する定義を活用し、看護疫学を疫学の 看護への応用として捉え、暫定的に「看護の視点からHuman responseの特性ないし human responseに係わる要因の特性を疫学的手法により明らかにすること」という定 義を述べた。

(2)EBMおよびEBNに関する先行研究の概略をまとめ、若干の考察を行った。

@EBMの概念について

 EBMは1991年にカナダのマクマスター大学のG.H.Guyattが初めて医学雑誌上で 使った。彼は貧血が疑われた患者での診断の進め方を例にあげて、科学的根拠に基づ いた、客観的かつ効率的な診療こそ今後の医療のある方であろうと述べた。(文献8)
 この考え方は、以降広く世界的に普及した。しかし、久道によれば、同じ考え方は、 すでに1970年代から存在しており、臨床判断分析(Clinical Decision Analysis)、 臨床疫学(Clinical Epidemiology)や医学判断学(Medical Decision Making)とし て知られているものであるという。(文献9)
 科学史家として著明な村上はEBMについて、「ある患者に対して、医師が治療法を 決めようとするとき、医師の頭にある根拠は統計性である。同種の患者に対して、過 去に治療法Aを採ったときの五年生存率はXパーセントであった。同じく治療法Bの 場合はYパーセントであった。X>Yであるならば、医師はためらわずに治療法Aを 採用しようとするだろう。最近こうした純粋に過去の症例統計に基づく医療をEBM と呼ぶようである。」「手術を考慮しなければならないような病状にある患者がいると する。手術をするときとしないときとに、選択肢を分ける。手術をしたときに、その 結果に再び選択肢を設ける。例えば、完全治癒、不完全治癒、死亡のそれぞれに、確 率を当てはめる。その確率は、過去の同種の症例から得られる統計に基づいて与えら れる。同様に、手術をしなかったときの選択肢として、同じような下位選択肢が確率 的数値とともに示される。そして、死亡に至る確率の最も少ない結果こそが、合理的 な選択として推奨されることになる。ちなみに、こうした治療選択は「証拠に基づく 医療」といわれる。」と述べている。(文献10)
 平成11年3月にまとめられた「医療技術評価推進検討会報告書」では、「EBMと は見ている患者の臨床上の疑問点に関して、医師が関連文献等を検索し、それらを批 判的に吟味した上で患者への適用の妥当性を評価し、さらに患者の価値観や意向を考 慮した上で臨床判断を下し、専門技能を活用して医療を行うこと定義しできる実践的 な手法」と述べている。また、わが国のEBM研究の第一人者である福井は、「入手可 能で最良の科学的根拠を把握した上で、個々の患者に特有の臨床状況と価値観に配慮 した医療を行うための一連の行動指針」と定義している(文献11)
 また、2000年の日本公衆衛生学会の教育講演において、帝京大学医学部の矢野は、 「Experience-Biased MedicineからEpidemiology-Based Medicineへ」とEBMの特 徴と目指すところを極めて明快に述べている。
 このようにEBMは臨床で実践できる根拠の集め方、使い方を重視し、自然科学的 な技法(=疫学的手法)を効果的に使い、その証拠を材料にして目前の患者の健康問 題をより効果的に解決することを目指すものであるといえよう。

AEBMの手順

久道によると、EBMの手順は次の通りである。(文献9)
 1.自分の患者に対する臨床的な問題を整理する。
 2.その問題への答えとなる最善の証拠(エビデンス)を文献検索する。
 3.その証拠が本当に正しいかどうか、妥当性と有用性を批判的に吟味する。
 4.吟味した結果を自分の臨床診療に適応させる。
 5.その結果を評価する。

BEBN(Evidence-Based nursing)について

 看護学領域においては、1998年にBritish Medical Journal出版からEvidence-Based Nursingと題するジャーナルが創刊された。また、わが国では看護とEvidence Based Medicineと題した特集が組まれる(文献12)など、根拠に基づく実践への関心はま すます高まりつつある。
 基本的な発想は、これまで看護職が”経験と勘”にもとづいて実践してきた看護実 践の世界を、確固とした科学的・客観的な基盤に根ざしたものとし、それを通じて看 護サービスの質を高めてゆこうとするものである、と言われている。
 エビデンスを作り出すための方法は、科学的手続きによって作り上げられるもので あり、多くの学問領域にわたり広く適用可能なものがある一方、明らかにしようとす る現象の特性に応じて特定の領域において妥当性が高いと判断される方法もあるであ ろう。
 医学と看護学は、その専門性の違いにより、関心のある事象に違いある。看護学は ケアに焦点をおく実践の学問であり、看護の専門性については、保健婦助産婦看護婦 法の記述によると、保健指導に従事する(保健婦、助産婦)、助産(助産婦)、傷病者 もしくは褥婦に対する療養上の世話又は診療の補助(看護婦)とされているが、その 範囲は人々の健康維持・増進、疾病の予防または早期発見、診療および療養上の世話 やリハビリテーション(または平和な死への援助)など、すべての過程に深く関わっ ている。(文献13)
 見藤は、現在広く使われるようになった看護の定義として「看護とは、健康現象に 対する人々の反応の予測と診断および対処である」を紹介している。(文献14)すな わち、医学は人間の生物学的・生理的な側面を重視するのに対し、看護学は心理面を 含んだ、患者の反応−訴えやQOLそのもの−を重視している、といえよう。従って、 EBNでは個々の患者の訴えやその置かれた状況の把握、実施した看護ケア、予後の フォローアップ等々を重視して、それらをしっかりとした記録ないし統計的なデータ ベースとして蓄積しておき、それらを踏まえて行動科学を活用し、最適な看護実践を 追究するという姿勢が最も重要であり、そのための方法論自体を自然科学的思考法を 中心として新たに考究する必要があると考えられる。

CEBNと疫学、情報学の関連について

 EBNは、整理された臨床的な問題への答えとしてのエビデンスを吟味することが、その根幹をなすといえる。このエビデンスを作り出す科学的方法として疫学、特に臨 床疫学が要請されているのであり、エビデンスの理解、疫学的手法とエビデンスの質の関連等の理解のためにも、疫学および臨床疫学の理解は欠かせない。また、当然な がら、EBNは必然的に情報の処理を伴う過程であるとともに、解決を要する看護上の問題の整理、文献の検索等においても情報学の理解は不可欠である。
(3)看護情報学や疫学に関連した多くの有用なインターネット上のサイトを検索・閲覧 し、それらのURL一覧を図表2にまとめた。
 また、オンライン検索により看護情報学および看護への疫学の応用に関する書籍を検索し入手した他、既存の関連情報を収集した。入手した書籍の一部の表紙および 次を図書一覧として添付した。
 これらの資料を通じて得た情報を整理し、本研究の目的にそって@看護情報学の定義について、A看護情報学の歴史について、B疫学および臨床疫学について、C情報 学、看護情報学や疫学に関する教育に関連して、DIMIA−NIについて、E共同研究者が関与している(していた)プロジェクトについて、としてまとめた。

@看護情報学の定義について

 1983年にGornは情報学(Informatics)をコンピュータ科学(Computer science)と情報科学(Information science)をあわせたものと定義しているが、一般的にあ る分野で情報学という用語が使用される場合、その領域において、データ、情報と知識を管理し、処理するために、コンピュータ科学と情報科学を応用することをさ すために用いられているという。(文献15)
 これに従うと、看護情報学は以下の通りに定義される。
 看護情報学(Nursing informatics)=コンピュータ科学(Computer Science)
 +情報科学(Information Science)
 +看護学(Nursing)
 IMIA−NIは1998年のソウルでの会議で、その正式な定義として、「看護情報学とは、世界中の人々の健康を支えるために、情報処理とコミュニケーションの技 術を用いて、看護、看護にかかわる情報および情報管理を統合したものである」と決定した。
 また、私自身で直接参加したセミナーで指導を受けたGoosens WTFは、「看護情報 学は、看護婦がその専門的な実践の範囲を広げ質を高めるために、データを如何に 収集・管理しているか、データを如何に情報と知識に加工しているか、知識に基づ く決定と推論を如何に下しているか、これらの実際的な経験に基づく知識を如何に 使用しているかについて、分析し、定式化し、モデル化することに係わる多分野に わたる科学的な努力である」としており、情報処理のプロセスを強調した定義を示 している。(図表3
 一方、医療情報学については、わが国のリーダーである開原は「医療情報学とは、診療・医学研究・医学教育・医療行政等、医学のすべての分野で扱われるデータ・ 情報・知識をその医学領域の目的に最も効果的に利用する方法を研究する科学」と提案しており(文献16)、研究領域、研究課題を明示した優れた定義である。

A看護情報学の歴史について

 1960年代から1992年にANA(米国看護協会)が看護情報学を専門領域として認 定した時点までの動きについてまとめた。(図表4
 1979年に、国際情報処理連盟から分離した国際医療情報学連合に参加する看護職を中心となって活動が進められ、1980年にはinformatics in nursingという語を使 用したワークショップが開催され、1986年にはNursing informaticsという術語が市民権を得た。
 なお、1990年以前の看護情報学に関連する研究動向の歴史については、J.R.Graves とS.Corcoranらの総説に詳しい。(文献17)また、山内は現在までの看護情報学 の研究動向を論じており(文献18)、本まとめの大部分はこれに拠っている。

B疫学および臨床疫学について

B−1 疫学について

 疫学の定義は多くあるが、よく引用されるものは次のMacMahon Bの定義である。
 「Epidemiology is the study of the distribution of desease in humanpopulations and of the factors that determine that distribution.(疫学は、 人間集団における疾病の分布とそれを規定する要因の研究を行う)」(文献19)。そして、明らかにされた疾病の原因に関する知見に基づき、発生を予防する学問といえる。
 疫学の理論を歴史的に概観すると、まず感染症の疫学が発展した。これは、host、 agentおよびenvironmentの3要因を枠組みとして設定し、特定病因論にもとづき、疾病の自然史の記述、agentの発見、発病にいたるこれら3要因の相互作用の解明を 目指すもので、agentの撲滅ないし人間のagentへの曝露の予防という、明確な因果関係的思考のもとに予防方法を開発し、また、二次予防、三次予防の方法論の開発に寄与するものであった。
 次いで、非感染症に対する疫学研究が進んだ。しかし、感染症の場合とは異なり、ある単独のagentを特定することは困難であり、多くの要因が複合し修飾しつつ疾 病の発症と進展に関連していることが解明されつつあり、生活習慣の関与が認められることが多い。ここでは感染症における特定病因論の立場からの疫学要因の考え 方は有効とはいえず、豊川はhostとenvironmentの2要因に着目して発生要因を多元的に追究する2元論疫学を提案している。(文献20)
 疫学という概念には次の内容が含まれるという。(文献19)
 疾病の自然史の研究
 疾病(健康障害)の頻度と分布に関する研究
 発症要因の研究
 人間集団を扱う研究
 公衆衛生学の基礎科学

B−2 臨床疫学の定義

 福井によれば、そもそも臨床疫学(Clinical Epidemiology)とは、J Paulが1938年に初めて用いた言葉であり「人間の病気が起こりやすい状況について研究する科 学」という意味で用いられた。その後、A R Feinsteinが「患者集団での診断、予後、治療などに関するデータを定量的に解析して、適切な臨床診断を可能とする学問」 として臨床疫学を確立した。1970代には、D L Sackett,R H Fretcher,S W Fletcherらは「疫学的手法を応用して、医師の診療行為や検査・治療法などの有効性と効率 性を評価する学問」と定義し、公衆衛生学の集団基盤的方法と臨床医学の個々の患者の特性に基づく予防医学とを融合し、個人についての研究が患者集団の研究と関 連づけられることになった。(文献21)
 また、ワイスは「病気の転帰(outcome)の変動とその変動理由についての学問」 と述べている。(文献22)
 久道は、「臨床疫学とは、医学における科学的観察とその解釈のための方法論の一 つであり、臨床医学で出てきた問題に対して疫学的原理と方法を適用するものとい われている。つまり、疫学の目的である疾病の原因、要因を探るための考え方や方 法論を、診断や治療法、およびそれらの評価に応用するものである。」と述べている。 (文献9)
 従来の疫学は、@疾病の発生、進行、転帰に関連する要因の究明、介入方法の効果 の解明という研究方法論の側面と、A研究により新たに得た知識(エビデンス)を 蓄積する側面が区別できるといわれるが、臨床疫学は@の理解を前提としてAの知 識にもとづき目前の患者に最適な医療を提供することを目指すものであると解釈す ることもできよう。

B−3 臨床疫学の重視

 本来、疫学(公衆衛生学)と臨床医学はそれぞれ医学の一領域であり、いずれにお いても患者(個体)の観察が不可欠であることは同じである。その違いについて重 松はかつて、疫学は集団における疾病の姿の観察を行うものであり、これを(患者 /母集団)と定式化する一方、臨床医学は個々の患者を観察対象としており、同様 な定式化は(患者/?)と、分母が不明であることがその違いであると指摘してい る。(文献23)
 このことから従来、疫学といえば公衆衛生学に属する方法論であり、臨床家には関 わりが薄い、知らなくても臨床は可能である、という認識が一般的であった。しか し、最近のEBMへの認識の高まりにより、疫学の方法論こそ実際は医療行為のエ ビデンスの質を規定する科学的方法であり、ある特定の患者集団を調査対象とした 疫学的手法にようるアウトカムの定量的な知見が臨床での治療方針の決定に不可欠 であることが認識されてきた。すなわち、臨床における意思決定を適切に行うため には、従来の(患者/?)という見方でなく、その母集団を想定することが不可欠 であり、母集団としては特に「治療を行う患者個人と同様の背景を持つ患者群」を 想定することが要求され、これが最近の臨床疫学の重視とつながっていると考えられる。

C情報学、看護情報学や疫学に関する教育に関連して

 わが国の高等学校学習指導要領(平成11年3月29日)における教科「情報」の部分の見出しを資料としてまとめた。(資料1)その主旨は、情報及び情報技術を活用するための知識と技能の習得を通して、情報に関する科学的な見方や考え方を養うとともに、社会の中で情報及び情報技術が果たしている役割や影響を理解させ、高度情報通信社会の諸課題を主体的、合理的に解決し、社会の発展を図る創造的な能 力と実践的な態度を育てること、とまとめられる。
 米国の看護系大学においてオンラインで開講されている看護情報学関連の講義のシ ラバス等について和訳した。(資料2)多くの看護系大学において、看護情報学は教 育・研究分野として認められており、大学院教育も充実している。インターネット を通じたオンライン教育も広く提供されており、その内容について紹介した。これ らのオンライ教育では、WebCT(www.webct.com)やBlackboad(www.blackboad.com) などの専用に開発されたシステムが使用されることが多かった。
 米国のNational League for Nursingが1999年度のワークショップで行った地域看 護実践への疫学の応用に関する資料を和訳した。(資料3)予防の観点から地域にお ける看護活動の重要性が高まり、臨床疫学の進展等が影響して、疫学学習の必要性 が強く認識されている現状を反映した内容となっている。
 看護情報学カリキュラム案について図書11、15の関連部分をまとめた。(資料4)米国の看護情報学関連のシラバスづくりにおける原点とも言われる両資料を紹 介した。
 「Learning to Manage Health Information」の主要部分を和訳した。(資料6)本報告書は、英国NHSの支援をもとに、看護情報学の研究者のみならず、広く健康科学 に関連する領域の研究者が参加して1999年に作成したものである。共同研究者もメ ンバーの一員として参加したものである。この報告書では、健康情報学(Health Informatics)は、ヘルスケア専門職の生涯教育における重要性をもったテーマであ るが、異なる段階の臨床教育を通じての統合は殆どなされていない、という認識の もとに、健康情報学を、ヘルスケア専門職の生涯教育におけるテーマとして提案す ること、生涯教育における保健情報学の教育的枠組みを確立するためのいくつかの主要な要素を提案すること、および生涯教育にしめる健康情報学の連続性を達成することの有用性について議論することを目的としている。そこで提案されている学習内容は、わが国の看護情報学のシラバスづくりの上で極めて示唆に富む内容とな っている。
 わが国の医師国家試験および保健婦助産婦看護婦国家試験出題基準における関連事 項をまとめた。(資料7)当然ながら、看護職を目指す学生の学習すべき内容につい て検討する場合には、国家試験の出題基準における関連事項を基本に踏まえること が必要と考えられる。
 米国における情報看護師(Informatics Nurse)の認定に関連する情報をまとめた。 (資料8)看護情報学の専門職としての情報看護師の資質として求められることを、 実際の専門職としての活動経験等を反映させて作成したものであり、特に大学院の 教育内容を考える上で貴重である。

DIMIA−NIについて

 国際医療情報学連合看護部会に関する紹介文を和訳した。(資料9)本文章は、そ の活動内容の骨格について明快に示したものであり、ワーキンググループとして現 在、標準(Standards)、教育(Education)、歴史(History)、EBP(Evidence Based Practice)、看護の諸概念(Nursing Concepts)、管理(Management)および研究 (Research)が活動している。

E共同研究者が関与している(していた)プロジェクトについて

 ナイチンゲールプロジェクトおよびアクションプランに関する情報をまとめた。(ナイチンゲールプロジェクトは資料10,アクションプランは資料11)その概要に ついては、後ほど紹介したい。                                 

2)Nursing Researchの文献検討



 看護研究の一流雑誌として評価の高いアメリカのNursing Research(American Journal of Nursing Research Co.刊)の47巻1号(1998年)から49巻5号(2000年)の間に 掲載された論文計96編から、(1)調査対象が人間であること、(2)人体資料(血液等)を 用いた研究は除くこと、(3)質的研究は除くこと、の条件を満たす論文を検討した結果、 83編が該当した。これらの論文について、根拠(evidence)を得るために使用した研究 デザイン、データ解析で使用した統計手法について分析した。欧米の一流雑誌を対象と して研究デザインと統計手法を分析したことは、わが国の看護研究においては初めての ことである。

(1)研究デザインのまとめ
 研究デザインについては図表5のとおりであった。
縦断的研究は48編(57.8%)であり、その内訳は、RCTが14編(うち並行法11 編、交互法3編)、準実験デザインが13遍(うちマッチングありが2編)、単独群の追 跡が21編であった。また、横断研究は27編(32.5%)、質問紙開発の研究が5編(6.0%) であり、既存のデータベースを活用した研究が3編(3.6%)であった。

(2)統計手法のまとめ
 これらの論文で用いられている統計手法についてまとめた結果は図表6のとおりで あった。なお、個々の文献においては、個々の統計手法について、使用されているか 否かの2区分で判定した。
 相関係数(ピアソンの積率相関係数、スピアマンおよびケンドールの順位相関係数) が最も多く23件で、次いで分散分析22件、重回帰分析21件、t検定20件、カイ2 乗検定18件の順で、これらの使用件数の合計は122件と全体の65%をしめていた。
また、ロジスティック回帰分析8件、共分散構造分析8件、共分散分析5件、因子 分析(探索的5件、確認的4件)など、最近重視されている統計手法も比較的多く使 用されている実態が明らかとなった。
 なお、先にわが国の「看護研究」誌に1989年から1998年までに掲載された論文の うち、量的研究を行ったもの67編について、同様に統計手法をまとめた結果を図表7 に示した。Nursing Researchと比較すると、重回帰分析とロジスティック分析の使用 頻度が少ないこと、因子分析が多く使用されているものの確認的なものはないこと、 共分散構造分析、共分散分析、比率の傾向性の検定、主成分分析は使用されていない こと等の違いが観察された。  
                                                        

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