2.英国における看護疫学および看護情報学の研究・教育に関する現地調査の実施

1)英国のSheffield大学看護学部の現地調査

 共同研究者のMs Paula M. Procterの在籍するSheffield大学は、イギリスの指導的大学として広く知られている。75のDepartmentがあり、170以上のcourseを提供して いる。Ms Paulaは、英国の看護系大学の中でも一位、二位を争う評価の高い看護学部 (School of Nursing and Midwifery)に所属している。昨年の12月末までは、看護学 のためのCTIセンター(コンピュータ関連技術の教授・学習への活用を研究するセン ターで、英国中に学問領域ごとに24か所設けられている)の所長を務めていた。
 Sheffield大学看護学部での疫学の看護への応用および看護情報学の研究・教育に関す る現地調査は、2000年2月下旬から3月上旬(2月26日〜3月5日)にかけて行った。
調査内容の概略は次の通りである。

(1)看護情報学シラバス(資料12
 実際の看護情報学チームのリーダーであるRod Wardから、直接的に説明を受けた。 なお、学内のみでオンラインで使用可能な教材である、WebCTシステムを活用した “Reader”の見学が可能であった。シェフィールド大学においては、講義の支援方 策として、学生に対して関連する教材へのアクセスを本システムを通じて可能とし ていた。講義の予習や復習に活用することが中心であり、看護情報学科目において は、その活用が積極的に進められていたが、時間的制約もあり内容の全貌は把握で きなかった。

(2)共同研究者(Ms Paula M Procter)が関与する看護情報学研究の実際のヒアリング ・共同研究者が関与してきた研究のうち、ACTIONプロジェクトプランについて、 成果(ハード、ソフトを含む)の紹介を受けた。Assisting Carers using Telematics Interventions to meet Older person's Needs(老人のニーズを満たすために、テ レマティクッスを活用した介入により、介護者を支援すること)」の頭文字をとって 名付けられたこのプロジェクトは、テレマティックス(telematics)の技術を応用 することにより、虚弱者、老人、障害者ならびに家族介護者の自律性、独立性とQ OLを拡大することを目的としたものである。本プロジェクトは、馴染みのある技 術、例えば介護者自身のテレビ、リモコン機器などを組合せたり、新技術や高速な プロセッサーを使用し、さらに双方向のコミュニケーション行うことを通じて、オ ンラインにより効果的なケア情報をやり取りすることが、ケア専門職と家族介護者 にとって現実のものとなることを示すことを目的としたものである。今回の関連教 員等を含む討議を通じて、単に研究成果を知ったのみでなく、本研究をEUに提案 するための計画書作成、複数の国の参加者が役割分担しつつプロジェクトを進行さ せるプロジェクト管理、住民のニーズを把握するための詳細な質的な評価、効果を 判定するための評価視点等、研究や教育の充実のためにも、多大な知見を得ること ができた。
 ナイチンゲールプロジェクトの存在を知った。「NURSING INFORMATICS GENERIC HIGH-LEVEL TRAINING IN INFORMATICS FOR NURSES GENERAL APPLICATIONS FOR LEARINING & EDUCATION」の頭文字をとった本プロジェクトは、EUの7か国が共同 したもので、看護専門職に対するヘルスケア情報システムの使用・適用のための教 育に関する戦略を企画し遂行するための必須のプロジェクトであり、(1)ヨーロッパ 中の看護職を、来るべき看護情報学の領域について、協調した方法により教育訓練 を行うことにより、欧州間において発達したテレマティクスの基盤を適切に使用す ることに貢献する、(2)看護情報学における一致したカリキュラムの作成を保証する ため、ヨーロッパ中のヘルスケア専門職のための教育に関する各種計画やプロジェ クトに協力する、(3)ユーザーグループは成果の監視と普及を行うもので、ワークシ ョップと会議を同意プロセスの主要な手段と位置付ける、(4)マルチメディア技術を 用いて、カリキュラム作成の過程に基づいて、教科教材を開発する、(5)全ての情報 と教科教材を、会議録の出版やWWWを通じて、全ての関係団体に対して自由に提 供する、ことを目的に掲げている。その研究成果は殆どがインターネット上で提供 されているが、現在までの看護情報学独自の研究成果のみならず、広く関連する情 報科学的知見、認知心理学的知見等も含む、正に現在までの看護情報学の集積とも いえ、今後、看護情報学について語る際のスタンダードとなるものであろう。なお、 ここに示された看護情報学関連の用語集も、大変有用であった。
                                                           

2)関連する教材、ソフト(CD-ROM等)の収集

 実物の視察を行った。看護情報学の学習のためのCD-ROMはEUの助成を受け複数の国 の研究者と企業が参加して、そのまま市販できるレベルのものが作成されていた (it-doctra、nightingale等)。なお、これらはいずれも看護情報学に関連するもので あり、疫学に関する資料としてはシェフィールド大学における印刷教材の閲覧が可能 あったのみであった。看護情報学に関するシラバスは、殆どがWWW上で収集可能であ った。また、共同研究者が直接関与したものではないが、教育支援のCD-ROMソフト (it-doctra)の提供をうけた。
 なお、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校へ、当校の日本人情報科学研究者 の案内のもとに、米国における看護情報学および疫学に関する予備的な情報収集のため に1999年の12月下旬に出かけ、米国看護協会等の出版物等を収集したところである。
                                                           
3)看護情報関連団体が開催する看護情報学セミナーへの参加

(1)「European Summer School of Nursing Informatics」への参加(参考)

 「European Summer School of Nursing Informatics」は、1990年以降、毎年開催さ れている。1999年のオーストリアのウィーン近郊のホルン(Horn)で開催されたセミ ナーに、日本人としては筆者が初めて参加した。本研究に先立つものであるが、検討 材料として有用なため、セミナーの概要(ホームページ上の資料)を和訳して示した。 また、参加したプログラムの詳細およびトラック(TRACK)での成果資料を添付 した。(資料13)本セミナーは、欧州の看護職における情報学的資質を高める上で大 きな作用を果たしており、また、看護情報学セミナーの持ち方について多くの示唆に 富むものである。

(2)第7回国際看護情報学会(ニュージーランド)への参加

 2000年4月末から5月初旬にかけてニュージーランドのオークランド(Auckland) にあるアオテアセンター(Aotea Centre)をメイン会場として開催された、国際看護 情報学会(The 7th International Congress of Nursing Informatics)へ出席した。
 3年ごとに開かれる本学会は今回が7回目であり、初回は1982年に英国で開催されて いる。本学会の目的は「看護職や他の健康関連職種が、その職業上の目的を達成する ための環境づくりに関して、情報を共有し、研究を進め、評価を行い、創造を行うた めの場を提供すること」とされており、学会の参加記録をまとめるとともに(資料1 4)、世界的な看護情報学研究者との交流を深めた。                            

                                                 

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