研究概要

 生体内の物理・化学・生物学的な情報を可視化することにより、これまでの診断法では困難であった病気が発見できるなど、病気で苦しんでいる患者さんに役立つような新しい診断方法を開発・実用化することを研究目的とします。卒業研究の詳細は卒研生の希望や能力に応じて単年度で終了するように項目を決定しますので気軽に相談してください。
 卒業研究を通して臨床現場で役立つような4年生大学卒業の放射線技師の育成を目指します。

研究テーマは以下の通りです。

1. MR装置を用いた脳機能解析に関する研究
 大脳生理学的な情報を可視化するFunctional MRI撮影(解析)法を用い、人間の視覚や聴覚、運動などの刺激により、脳内で何が起こっているのかというメカニズムについて解明する。
 「言葉を聴き、理解して復唱する」という一連の動作が脳内のどの部位を使っているのかということを解明することで、失語症[脳損傷によって出現する言葉の障害で、言葉の機能(聞く、読む、話す、書く、計算)のすべての面に何らかの困難が生じる症状]の治療に役立てる。これまで以下のような研究成果が出ているが、本年度も引き続き解析を進める。

健常ボランティアによる言語復唱課題の結果



2. Tagging心筋撮像法による左室運動解析
 Tagging心筋撮像法とは右図に示すように、格子状の線を撮影時に付加して心筋の動きで格子が乱れる様子を撮像したものである。この画像から心筋の動きを解析することで、正常な心臓がどのように動いているのかという事を解明し、さらに心筋梗塞や心筋症などを起こすと心筋の動きがどの様に変化するのかということを明らかにする。
 これまでTagging画像からの解析は手作業に頼るところが多く、解析ソフトウェアとして実用化されていないのが現状である。本研究では心腔内の成分の除去、格子点を追跡を自動的に行う解析ソフトウェアの開発を目的する。

健常ボランティアの心筋から動きを解析した結果



3.    MR装置による生体内の理化学的情報の可視化に関する研究
 生体内の温度、pH、圧力などの理化学的情報をそれぞれ断層画像化する技術を確立し、その医学的利用価値について検討する。

生体内圧力の可視化
 原理は糖を主原料とした微小泡造影剤を投与してMRIを撮像することで,圧力強調画像を得ることができることを発見しました。この成果は第27回日本磁気共鳴医学会で報告し大会長賞を受賞しました。この成果をさらに応用して生体内の圧力を断層画像で可視化するために、豚を使った動物実験を行っています。昨年は心筋梗塞モデルを作成するために開胸手術を行いました。かなり大掛かりな実験で、昨年度の卒研生の方々と共に実験しました。本年度も引き続き実験を行います。

4.       動画像認識を用いた診断支援システムの開発
 動画像中を移動する物体を認識する技術を医学応用する。健常者と異常症例との違いをコンピュータで検出し、診断支援システムを開発する。具体的には2つのモダリティーに対して応用する。

@    心電図同期心筋SPECT画像を用いた心筋壁運動解析
 拡張―収縮に至る過程を3次元的に解析することにより、心臓の動きのメカニズムを解明する。MRIのTagging法では2次元的な動きしか判らないが,この方法だと心筋全体の動きが解明できる。SPECT画像から解析した心筋の動きをBullseyeで表示した例を下図に示します。

この結果は医用情報学会で最優秀論文賞に相当する内田論文賞を受賞することになりました。
この理論を応用した商用解析ソフトウェアを医療機器メーカである島津製作所と開発しています。
健常例と疾患例でどのような解析結果となるかをこれから検証していきます。

A    X線透視画像を用いた消化管壁運動解析
 バリウムの通過が早い(または遅い)ために診断が難しいといわれるX線透視画像に動画像認識技術を応用し、人工消化管(食道、胃、腸)形成手術後の効果判定に応用する。 


5.       MR装置を用いた新しい撮像法の開発
 EPICというMR撮像法の開発環境を用いて新しい撮像法を開発し、その臨床的評価も含めて検討する。具体的には3種類の撮像法を計画しています(理論計算、プログラミング、ファントム実験、動物実験、ボランティア実験を含む)。これらの研究はGE社との秘密保持に関する契約に基づくなどの条件が詳細にあるので、希望者は事前に相談してください。

 EPICというMR撮像法の開発環境を用いて新しい撮像法を開発し、その臨床的評価も含めて検討する。具体的には3種類の撮像法を計画しています(理論計算、プログラミング、ファントム実験、動物実験、ボランティア実験を含む)。これらの研究はGE社との秘密保持に関する契約に基づくなどの条件が詳細にあるので、希望者は事前に相談してください。

@    超高速MRアンギオ撮像法の開発
 通常のMRアンギオを撮像する場合は撮影時間に数分要するが,本研究室で開発した撮影シーケンスで撮像すると1枚あたり最短0.1秒で撮像可能となる.しかも,画像処理を必要とすることなく得られた画像そのものがアンギオ画像であるという画期的な撮像法である。
 既にシーケンスそのものは開発済みであるが未だ発表前なのでここに詳細は記しません。興味のある方は妹尾まで直接問い合わせてください。平成15年度はこの撮像シーケンスの画質改善について研究します。

A    超高速多次元拡散撮影法 Multi Dimensional EPI-Diffusion撮像法の開発
脳内神経繊維(シナプス)の走行状態を取得するEPI-Diffusionは3軸しか現在は撮影できない。その測定精度を向上させるために多次元的なEPI-Diffusion撮像法を開発する。

B    超高速化学シフト撮影法 EPCSI撮像法の開発
生体内の化学的性状を示す化学シフト画像の取得には通常は約20分程度検査時間が必要である。本撮影法の開発により20秒程度で同様の画像が取得できる。

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