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卒業生・修了生と同じ道を志す"仲間"でいたいと考えています

第2回 卒業生と座談会(教員編)

第2回目の今回は、私たち“教員編”として座談会を行いました。本学の卒業・修了生であり、10月に新しく着任した助教の紹介も兼ねながら、在学当時のこと、今に至るまで、そしてこれからについて、普段は中々話す機会のない話を私たち小児領域の教員でざっくばらんにお話ししました。



原点に立ち返って見える“考える力”


種吉:海老名先生は、学部から大学院と本学で学び、今年、教員として戻ってきてくださいましたね。教え子と一緒に働けるようになるとは、教員冥利に尽きますね。

海老名:学生時代を振り返って、原点に立ち返ったときに、物事を考えて自分の力で何かを導き出すことって、“すごく楽しい!”という経験があったから今の自分がいるんだと、自信をもって言えます。これは、先生方が“考える力”を身につけることができるように、ある意味仕向けてくださったからだと私は思っています。それが自分自身の土台となって今につながっている。そう考えると、やっぱり次は、自分がそれを学生に伝えていきたいな、伝えていこうというミッションのような気持ちがあります。

種吉:“教え子”の逞しい気持ちが聞けましたね。

山本:海老名先生は、学部の卒業研究の時も大学院の時も、一人でどんどん研究を進めていく感じでした。「できません」って決して言わない。だから、一人で論文書きあげましたって感じだった。種吉先生には相談をしていたようなんだけど・・・それでも最後には自分で結論を導き出せたから、やっぱりそういう力がある人だと思っていました。学生時代から、“考える力”はありましたね。ぜひ、後輩の学生にも伝えていただきたいですね。

“考える力”とは何か

海老名:“考える力”があると言ってくださるのは嬉しいです。反面、実習指導の場面の中で、教科書や参考書だけの学習では出てこない考えをもって子どもと関っている学生を見て、自分の発想にはないと「ハッ」としたことがありました。私自身、「こうであれねばならぬ」というような思考が強いと自分自身では分析しているので、凝り固まった頭をほぐさなくては・・・と日々感じています。これが難しい。柔軟な発想ができる力が欲しいです。

山本:海老名先生は、頭で考えて理解しないと先に進めないタイプで、それを学生時代から感じていました。でも、頭の中でシミュレーションしたように子どもや家族を支援しても必ずしも上手くいくものでもないから、当時はそれで結構苦しんでいた記憶があります。そこを楽に行ける人と、どうしてそれをしなきゃいけないのかっていう理屈が分からないと動けない人と、2パターンがいますね。でも、「こうであらねばならぬ」から抜け出せずにいるかもしれないというのは、気づいているのだからいいと思う。まずは気づくことが大切。

未来に続く土壌づくり

種吉:看護基礎教育現場では、看護師になるための“人となり”を整えるが大切なことだと思います。その一つに、様々な“考える力”が存在するのかもしれない。そのために、大学の文化であったり、風土だったり、同じ目標を持つ仲間などの土壌が必要だと思います。でもそれは簡単に築き上げることはできない。

山本:同じ土壌で育った卒業生が教員として着任してくれるのは、それはすごく教育する上で大切なことだと思います。そしてまた、海老名先生が育てた人が帰ってくるという、そういう連鎖があると嬉しい。


第1回 卒業生と座談会

今回は,東京都立保健科学大学(東京都立大学の前々身)の3期生のお二人と同窓である山本教授が座談会を行いました.3人の共通点は,「障害のある子どもと家族のよき理解者でありたい」ということ.在学時代のことから現在の活動に至るまでをざっくばらんにお話しいただきました.それぞれの熱い思いをお聞きすることができましたのでご紹介します.



大切なもの・・・“つながり”と“譲れない気持ち”


山本:卒業後15年以上過ぎてまたお会いできて嬉しいです.二人はよく会っているの?

M:色々な形で繋がっていますよ.私が子育てに忙しい時には,Iさんは院生で大忙しだったから年賀状のやり取り程度だったけど,訪問看護ステーションを立ち上げた今では良き相談者になってくれたり・・・でも,Iさんだけではなくて他の同級生も縁は切れていないですね.

I:そうだよね.誰かから「困った!」発信があると,ネットワークが働く感じかな・・・.そのネットワークも「子ども連れてイルカショーでも見に行く?」って感じで集まって,雑談の中から悩みが出て,「私,いい人知っている!」って繋がっていく・・・・

M:同級生っていいよね.「悩んでいます」「困っています」って,正直に言える.この歳になると社会の中では弱みを見せられないことが多いけど,同級生なら関係ない.でも,最近は「教えてください」って言うことも多いかな・・・恥ずかしいけど.

山本:Mさんは恥ずかしいっていうけど「教えてください」って言えるのは,「知りたい!」っていうことでしょ.素晴らしい.

M:Iさんは,大学院で勉強したこともあって「困った」の紐解き方が上手なんですよね.「何に困っているの,どうしたの」って言いながら聞いてくれて,最後に「これはこうすればいいでしょ,これはこう考えたらいいでしょ」って・・・・

I:そんなことないよ〜(笑)誰かが困ったら誰かが助ける,そんな縁を持ち続けていられることに感謝ですね.まぁ,学生時代からそんな雰囲気は学部にあったよね.

M:そうだよね.学科を超えて仲良かったし,「私だけ認められたい」って競争するのではなく,「みんなで頑張ろう!」的な・・・・

I:そうそう,これは伝統的な文化かな.あと,今,私の施設で首都大(現都立大)の4年生の実習をお受けしているんだけど,学生が良い意味で自由なの.「看護師ならばこうあらねばならない」ではなくて,自分が考えていることを正直に発言するし,その学生の視点が「私がこの子どもだったらこう考えると思うんです」って・・・・時には「看護かな?」っていうときもあるけど,「はっ」とすることもあって,面白い.

M:私たちが学生の頃も「こうしなさい」って押しつけの教育ではなくて,学生の意見を認めながら「その方法も間違ってはないけど,こういう方法もあるよ」って言ってくれることが多かったから,もちろん間違ったこともいっぱいあったけどそれでも何度も何度も正直な考えを言えたかな.あれは良かったよね.

I:そうそう,それが今も続いている感じがある.

山本:自分で考えてみることは大事で,まずは考える.そこからだよね.うちの学生は自分の力で成長できるからね.

M:今もいろいろあるし,ここに至るまでは長い道のりだったけど,変わらないものは学部生の時に自分が考えて見つけた「大切にしたいもの」かな.

I:確かに.私も寄り道したし何度も曲がり角を曲がりながら今に至っているけど,根本というか原点は,学部生の時に自分が考えて気づいたかな.

今,地域で暮らす子どものために何ができるのか

M:初めは,小児専門病院で働いていて,結婚退職して子育てして,最近まで保育所で勤務していました.その保育所看護師の期間では,それまでにはない,新鮮な経験がありました.保育所という福祉の現場で看護師として何ができるのか,模索しながらも,保育所看護師の役割や多職種連携によって得られる可能性を見出したきっかけにもなりました.そのなかの一つ,病院で看護してきた子どもが,地域では医療的ケアがあるだけで,生活に選択肢がないとか,行き場がないのはおかしいんじゃないかという想いが湧いてきたんですね.その想いが,人と人を繋げる力になって,今に至っています.そして,色々な方に助けていただきながら,地域医療と訪問看護ステーション,保育所,行政を繋げる役割をしたいと考え,奮闘しています.

I: 私は療育センターの地域医療連携室に所属しています.もともと,目の前の子ども一人一人の看護を実践することに生きがいを感じていました.しかし,小児看護専門看護師として所属施設を俯瞰した際,在宅や施設で暮らす様々な障害ある子どもと家族を,24時間対応できる体制や豊富な医療設備のない当センターにおいて,どのように地域と連携し健康を守っていくのかという大きな課題が見えてきました.そこで,首都大の大学院で学んだ専門看護師としての知識や技術を踏まえ,日々,問題解決やシステム構築などに取り組んでおります.一人一人の子どもの看護を大切にしつつ,組織や地域など多くの方々と手を携えることで生まれるさらなる大きな力を実感したときに,この役割の醍醐味も感じました.3年経ってやっと分かってきた感じですね.

これからのこと 座談会を終えて

お二人との座談会は楽しく,あっという間の2時間でした.座談会を終えた直後,私はMさんに「やっぱりね.学部生の頃に言っていた通りになったね」と声をかけました.こう感じたのはIさんに対しても同じでした.お二人とも,あまり人がやっていないことだけれども,手助けがあることで,子どもとその家族が少し楽に生きられるような,縁の下の力持ちになる姿を想像していました.きっと学部生の頃から,そのように思わせる「人となり」だったのだと思います.自分の個性を輝かせながら看護師として力を発揮する姿はとても誇らしく,目の前にいる学生たちの個性を見守っていくよう,メッセージを頂いたと思いました.

小児看護学領域では,常々,卒業生と同じ道を志す“仲間”でいたいと考えています.困ったときに遠慮なく頼り合える,そのような仲間としてこれからもいたいと思います.


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